キリンホールディングス株式会社(社長 磯崎功典、以下キリン)と株式会社ファンケル(社長 島田和幸、以下ファンケル)は、2019年の資本業務提携を契機に共同研究を始めています。このたび、キリンが保有する「白麹菌※1」に含まれる成分「14-デヒドロエルゴステロール」(以下、14-DHE)が、美肌機能に関わるタンパク質「アルギナーゼ 1※2」の活性を高めることを発見しました。
白麹菌(しろこうじきん)
研究背景と目的
キリンは、自社が保有する「白麹菌(Aspergillus kawachii)」に含まれるステロール類※3の「14-DHE」に、経口摂取で高い肌質の改善効果があることを確認しています。しかし、どのように肌に働くかというメカニズムは未解明でした。そこで、この「14-DHE」の肌質改善に関するメカニズムの解明と皮膚への効果を視野に入れ、2019年10月よりファンケルと共同研究を始めました。
評価方法と結果
ファンケルは、従来から皮膚表面に多く存在する「アルギナーゼ1」が、角層の保湿機能や肌の酸化、糖化の制御に関わり、肌の明るさやシワなど美肌に導く重要なタンパク質であることを確認しています(図1、2)。今回、このタンパク質に着目し、「14-DHE」を評価しました。
図2 角質中の「アルギナーゼ1」シワ面積の関係(ARG-1)量と皮膚の明るさ
「白麹菌」の菌体抽出物から精製された「14-DHE」を、培養したヒト表皮角化細胞に添加し、「アルギナーゼ 1」の酵素活性を測定しました。その結果、「14-DHE」を添加していない細胞のコントロールと比較して、「14-DHE」を添加した細胞では、「アルギナーゼ 1」の高い活性を確認しました(図3)。これにより、「14-DHE」は美肌タンパクの「アルギナーゼ1」を活性化させる働きがあることが分かりました。「アルギナーゼ1」は、皮膚の保湿機能、酸化や糖化を制御する機能など、老化による皮膚機能の低下を正常化する働きがあり、美肌タンパクと言われています。「アルギナーゼ1」の活性化が進むと、美容機能が高まり美肌効果が大いに期待できます。
図2 「アルギナーゼ1」の活性化測定結果
今後の展開
今回、「白麹菌」の菌体抽出物に高含有する「14-DHE」が、美肌に関わるタンパク質「アルギナーゼ 1」の活性を高めることを確認しました。「14-DHE」は、「アルギナーゼ 1」の活性を高めることで従来の対処的なエイジングケアではなく、肌に対して根本的なアンチエイジング効果のあるオールマイティーな成分として期待できます。